成年後見人の老人ホーム選び

必要があれば被後見人(補佐、補助)の住む施設を探し、契約し、そこで不自由なく暮らせるよう環境を整える。というのは成年後見人の重要な仕事の一つです。
その中でも施設選びは、本人の今後の生活の拠点となる場所を選ぶので非常に難しい仕事です。

当然、本人の状態、財産や収入支出、家族の援助の有無などによって、選択肢は限られるし、本人が意思表示を出来る状態であれば、一緒に見学や体験入居をしてもらって本人の気に入った施設と契約すればいいのでそこまで苦労はしないかなと思います。

しかし、僕らが後見人になっているということは、被後見人がはっきりとした意思表示ができなくなっていることも多いので、とても悩ましい。

また、お子さんなどとても近い親族がいれば相談して選ぶこともできるけど、中々そうもいかない場合も多くあります。
お子さん同士で意見が対立って可能性もあります。

遠い親族の場合、本人の状況や希望などほとんどわからないことも多いですし、中には、できるだけ財産は使わないように…と希望してくる人もいたりします。

ですので特にある程度資産のある方の施設選びは本当に難しい。
資産が十分にあっても、高級な施設が本人にとっていい施設とも限らないし、住んでいたところの近くがいいのか、遠くても環境が良いところがいいのか、生まれた育った場所の近くがいいのか、レクリエーション豊富な施設がいいのか、少しでも子供に財産を残すために費用を抑えた施設がいいのか…

選択肢が多いだけに本当に頭を悩ませます。

そしていざ契約をして入所しても、本当にここで良かったのか、あっちの施設の方が良かったんじゃないか…と優柔不断な私は考えてしまいます。

たとえ資産がある方でも、その資産が自分の望む形で使われなければ本当にもったいないと思うし、申し訳ない気さえしてしまいます。

こういう事態を避けるためにも、これからのため、元気なうちにできることを少しでもやっておいて欲しいと、切に思います。

任意後見契約などがベストではあると思うけど、そこまでしたくないというのであれば、今後の自分の生活の希望を書き残しておくだけでも全然違うと思います。
とは言っても、せっかく書いてもそれが有効に利用できないものだと元も子もないので注意してください。

手前味噌にはなってしまいますが、自分や家族の今後のこと、老後のこと、死後のこと、少しでも考えてみようと思うのであれば司法書士に相談してみてはいかがでしょうか。


人の想いは十人十色。その想いをカタチにするお手伝いを司法書士は行っています。
お気軽にご相談ください。




事例…くれると言っていたんですけど…書面によらない贈与

私は月に1度、司法書士会の電話相談(ホットライン)の当番を受け持っているのですが、その際に、ひじょーに多い相談があります。
それが今回の題名にもなっている「くれると言っていたんですけど…」です。


Aさんは高齢で一人暮らしのため、色々不自由もあり、近所に住んでる遠縁のBさんに身の回りの世話をしてもらっていました。

Bさんは相続人ではありません。

Aさんの相続人は疎遠になってる兄弟Cしかいなかったので、日頃から「Bさんには本当に感謝している。私が亡くなったら、私の財産は全部あなたに貰ってほしい」と言っていました。

そして、ある日、Aさんが亡くなりました。

すると突然、疎遠だったCさんが現れ、Aの財産は全て自分の物だと主張してきました。

Bは「生前にAさんは私に全ての財産をくれると言っていたんですけど…」と主張しましたが、Cは「そんな話聞いてない」と言って取り合ってくれません。

どうにかなりませんか?



似たような相談は本当に多いですが、今回の事例は、相続人でない知人に対し、「私が死んだら財産をあげる」と言ってはいたけど、書面にしていなかったので、相続人が全財産の相続を主張してきたという事例です。

まず、贈与は書面でなく口頭でも成立します。
しかし、贈与はあくまで当事者間の契約なので『あげます』『もらいます』という両者の合意が必要です。

今回の場合、Aは『あげます』と言っていますが、Bは『もらいます』という意思表示をしていたかどうかが、まず問題となります。

仮に『もらいます』と言っていたのであれば死因贈与は成立していると考えられます。

しかし、これら一連の事実(『あげます』『もらいます』)は証人等により立証しなければなりません。

立証に成功し、贈与が認められたとしても、まだ問題はあります。

書面によらない贈与は、その履行が終わるまでの間、贈与者によって撤回することができてしまうのです。

今回は、現時点で履行(AからBへの財産の引き渡し)が済んでいないので、贈与者であるAの撤回する権利を相続したCは、この贈与を撤回することが出来てしまいます。

まぁこの場合、当前Cは撤回権を行使するでしょう。

ただ、救われる可能性はあります。

実は、たとえ書面によらない贈与であっても、撤回できない場合があります。

それは、贈与に負担(条件)が付いていて、贈与を受ける人がその条件をすでにクリアしている場合です。この場合は、たとえ書面によらない贈与であっても、撤回はできません。

簡単に言ってしまうと『家を掃除してくれたら、あげるよ』と言われて、家を掃除したとします。この時点で掃除という贈与の条件をクリアしているので、これ以降、書面によらない贈与であっても、好き勝手に撤回は出来ない。ということです。

今回の事例について考えてみます。
Aは「自分が死んだらBに貰ってほしい」としか言ってはいませんが、この発言は、BがずっとAの身の回りの世話をしていたことから考えると『今後も身の回りの世話をお願いします。その代わりに私が死んだら財産をあげます』という趣旨の発言であり、『Aが死ぬまでの身の回りの世話をする』という条件が付いた死因贈与と考えることもできます。(もちろん、そう考えられるだけの立証は必要です。)

この場合、実際にBさんがAの世話をやり遂げたことを証明できるのであれば、すでに条件をクリアしていることになるので、Cはこの贈与を基本的には撤回することが出来ないと考えられます。

とはいえ、これら一連の立証のハードルはとてもとても高いと言わざるを得ませんし、仮に立証できたとしても、多くの要因が絡んでくるので、絶対に認められます!とは言えないのが現状です。

やはり、書面によらない贈与は絶対に避けるべきです。

もし、あなたが誰かに何かをあげたいと考えるのであれば、しっかりと『書面による贈与』や『遺言』といった形に残してください。
そうしなければ、あなたの想いは実を結ばないばかりか、トラブルの種になってしまうかもしれません。

そして、もらう側の人も「くれる」と言われたのであれば、しっかりと形に残してもらえないか話してみてはいかがでしょうか?
もちろん、自分から「書いてくれ」なんて言うのは気がひける。財産目的みたいで嫌だ。という気持ちもわからなくはありません。
ただ、しっかりとした形に残さなかったばかりに、死後、余計なトラブルを招き、もっと嫌な思いをすることになるかもしれません。


死んでしまってからや、認知症になってしまってから、トラブルになってしまってからでは遅いんです。
安心して『これから』を迎えるためには『今』出来ることは『今』することがとても大事です。





新年明けましておめでとうございます。

新年、明けましておめでとうございます。

旧年は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

あっという間の1年。

もう平成27年です。

やっと平成26年に慣れたのに・・・。

おそらく、しばらくは書類に平成26年と書いてしまう日々が予想されますが、今年も頑張って司法書士をやっていきたいと思います。


今年は、頑張って去年のブログよりは多く更新したいと思っています(苦笑)

有名人の遺産相続

某有名人のニュースで気になったことがあったので今回はそのことについて書きたいと思います。

ニュースは、その方の遺産は総額8億から9億で、その内の6億は大阪市に寄付、残りは後妻に全て相続させ、子供には一切相続させない。といった遺言が残されていたというものでした。

遺産は亡くなった方の財産なので、生前に「誰にあげたい」「誰にあげたくない」といったことを思うことは普通のことです。そしてその想いを遺言というカタチに残されたことはとても良いことだと思います。

しかし、今回は大きなミスがあったようです。

法律で決められた相続人には原則として最低限の相続分が保証されています。それが遺留分です。

今回の場合、相続財産を渡さないと書かれてしまった娘さんは、遺留分減殺請求をすることにより全財産の4分の1を取得することが可能です。

従って、通常は、遺留分減殺請求されることを見越して遺留分に相当する財産を娘に相続させるか、もしくは娘に遺留分減殺請求された場合に備えて、減殺請求する順序というのを遺言に遺しておきます。

そうしないと折角遺言を書いても、逆に争いの火種を大きくしてしまう可能性があるからです。

しかしこの遺言にはそういった配慮がされていなかったようです。

ニュースでは遺言が公正証書だったのか自筆証書だったのか等細かいことは言っていなかったのでわかりませんが、おそらく専門家のチェックを受けていなかったのか、もしくは別の要因があったのか…

兎にも角にも、この件は今後は困難な話し合いが予想されます。

やはり、遺言などの、これからを安心して迎えるための重要な手続きは、弁護士さんや司法書士に任せるべきだと思います。

相続登記に使う戸籍の有効期限

事務所に相続登記の相談に来る方で、以前に自分で手続きしようと思って戸籍等を頑張って集めたけれど、途中で挫折してしまった…。という方がちらほらいらっしゃいます。

実際書類を確認してみると、おしい!ってところまで集めている人もいれば、全然足りていませんね…。という方もいます。

集めれば集めるほど、昔の戸籍になるので字が読みづらくなったり、市町村合併等で今は存在しない地名だったり、場所によっては焼失なんてものも結構あります。

ずーっと同じ本籍地で暮らしていた人の場合は、一つの役所で手続きが終わるので簡単なんですけどね。

で、途中まで集めた戸籍等はもうすでに何カ月何年も前に取ったもの。なので「これらはもう使えませんよね?」と言われることがありますが、そんなことはありません。

何年経っていようが使えます。

戸籍によって何を明らかにしたいのかというと、被相続人(亡くなられた方)の相続人は誰なのか?ということです。

実は前妻との間に子はいないのか?とか、どこかで養子縁組していないのか?そして、相続人は生きているのか?を証明するために必要なんです。

なので、集めた戸籍が被相続人が亡くなられた後のものであれば、それから何年経っていようが、被相続人に関するその戸籍の内容は変わるはずがないので使えるわけです。

ただ、相続人については、被相続人が亡くなった時は生きていたけど、その後亡くなってしまった等の理由で変更が生じる可能性は大いにあります。

だとしても、その当時の戸籍を利用して登記をすることができます。

被相続人の亡くなった時点でその相続人は生きていたのであれば相続人であることには変わりないからです。

なので、亡くなった相続人名義に登記することだってできます。この場合は、亡くなった相続人の相続人が申請者になります。

また、被相続人が亡くなった当時、相続人間で遺産分割協議書を作って印鑑証明書も用意してあったのであれば、遺産分割協議を行った相続人が亡くなってしまったとしても、その協議書や集めた戸籍に基づき登記ができます。

要するに、戸籍や協議書が古かろうと、事実に則していれば登記はできるということです。

今回は何が言いたかったのかというと、昔集めたものや、作った書面など使えるかどうかを安易に判断せずに、専門家に相談しましょう。ということです。

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。
昨年は、司法書士事務所ライズをご愛顧頂きありがとうございました。
本年も、昨年同様、法律家として少しでも皆さんのお力になるべく、がんばってまいります。

そんなこんなで本日から仕事初めです。
連休での不規則な生活のせいで、うちの子供は朝からグズグズ、保育園でも大泣きだったので、私の仕事初めもかなりグズグズになってしまいましたが、今日は午後から国分寺市役所の相談員の仕事が入っているので、気持ちを入れ替えて行こうと思います。

ではでは。
今年もよろしくお願いします。

自己破産と損害賠償

昨日、ニュースで自転車と歩行者の事故による損害賠償について取り上げていました。

自転車が信号無視で歩行者にぶつかり、歩行者に後遺症が残り数千万円の損害賠償命令。 自転車も立派な車両なので、当然の結果だと思います。

ここで大きな疑問。

一般人にそんな数千万円の賠償金が払えるのか。 自動車とは違って保険の加入が義務化されてないので多くの人は保険に入っていません。 したがって自分でお金を用意する必要があるので大変なことになりますよね。というか、一部の富裕層を除いて不可能ではないかと思います。

ちなみに小学生などの子供が自転車で事故を起こしてしまった場合、監督責任としてその親に損害賠償請求されることもあるので、ちゃんと子供には最低限の交通ルールは叩き込んでおくべきです。 「子供がしたことなんだから…」ではすみません。

うちの娘はまだ小さいので自転車には乗れませんが、乗れるようになったらみっちり教えます。

先程の損害賠償のことですが、そんな数千万円の賠償となったら払えるわけがない。自己破産しかないな。と、考える人もいると思います。 しかし、そういうわけにいかない場合もあるんです。 自己破産とは、ある一定の財産を除いたほとんどの財産で払えるだけ負債を払って、払い切れなかった負債を免除してもらえるという制度です。

しかし、払いきれなかった負債すべてが免除されるわけではありません。

非免責債権というのがあります。 要は、自己破産したとしても免除されない債権のことです。

滞納している税金や罰金、養育費、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求、故意または重過失により加えた生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求などがそれに当たります。

この中で今回関係があるのは、故意または重過失により加えた生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求という部分です。

通常の不法行為に基づく損害賠償請求ではなく、「故意または重過失により加えた」という部分が重要です。

おそらく、少しよそ見運転をしていて相手を怪我させたような場合は、重過失には当たらず、免責される可能性が高いと思います。

では、信号無視やスマホを操作しながらの運転で事故を起こしてしまった場合はどうでしょう?

事案により、裁判所が判断することになると思うので一概には言えませんが、重過失と判断される可能性もあるのではないでしょうか。

個人的にはそう思います。

そうなると、免責はされず、生涯を掛けて支払って行くことになり、人生は一変してしまうかもしれません。

婚外子の相続差別は違憲 最高裁

出ましたね。最高裁判決。

一応、この問題をざっくり説明すると、

結婚していない男女の間に生まれた子の相続分が、結婚している男女の間に生まれた子の相続分の半分て言うのはどうなの?という問題に対し、最高裁が「違憲」と判断した。

という問題です。

ざっくりすぎる気もしますが、詳しく知りたい方はニュースとかサイト探せばいくらでも詳しく書いてあるのでそちらでお願いします。すいません。

この問題ですが、私の立場はというと…ケースバイケース。ってかんじかなぁ。。

何とも卑怯な回答ではありますが、そもそもこの問題っていろんなパターンがあると思うんですよね。

たいていの人は婚外子って聞くと、不倫相手や愛人の子みたいなイメージがあるかもしれないけど、そうじゃない場合も結構ある。

たとえば、昔1度結婚しててその時に子供ができたがその後離婚。再び違う相手との間に子ができたが、籍は入れずに死ぬまで一緒に生活を送る(いわゆる事実婚)。

この場合、事実婚の二人の間の子は、結婚していた時の子の半分しか相続分はない。

他にも、婚外子とはいえ、親と一緒に暮らしたり、老後の面倒を見ていた場合もあると思う。逆に嫡出子って言っても、何十年も疎遠になってる場合とかもあると思う。

そういうものをすべて一色単にしていいのかなぁ??

生活形態、家族形態が多様化している今の日本で、結婚してるかしてないかだけで相続分を法律で決めているのが、そもそもの間違いだ!

と言いたいところだけど、法律でこういう場合はこうで、こういう場合はこう。なんて事細かく決めれるわけもないわけで…。

で、ここでやっと今回の本題です。

こういった問題においても、100%とは言えなくても、ある程度解決できるのが”遺言”です。

しょっちゅう書いている気がしますが、遺言は、自分が死んだときに自分の意思で自分の財産をどうするかを決めておくことができる唯一の方法です。

今回のような場合も、遺言があればこんな大事にならなかったかもしれません。

たとえば、財産の半分は妻に、六分の二は嫡出子に、六分の一は婚外子に相続させる。という遺言があったのであれば、婚外子は遺留分が侵害されていない以上、文句は言えません。

逆に、父親が婚外子にも嫡出子と同じ相続分をあげたい又は、婚外子の方に多くあげたいというのであれば、そう遺言に遺していればよかったわけです。

自分たちの生活や家族形態を一番知っているのは間違いなく”自分”なんだから、それを踏まえて、法律なんかに頼らずに、自分の意思を遺すこと、争いの種を遺さないことは、親の義務だと思うわけです。

自筆の遺言

相続が発生してからの手続きをとても楽にしてくれる遺言書。

遺言書にはいくつかの種類がありますが、私的に絶対お勧めするのが公正証書遺言。

ただ、公正証書遺言は公証役場に出向く必要があったり、費用がかかるので、司法書士などの専門家を介せずに遺言を作成される方の大半は自筆証書遺言を利用されているような気がします。

自筆証書遺言はたしかに作るのは簡単です。が、しかし、書き方を間違っていたりすると無効になってしまう場合もありますので注意が必要です。実際、事務所に来られた方で「その遺言所書は…」という方も時々おられますので。

そしてなにより、私が思う、自筆証書遺言の最大のデメリットは、いざ相続の手続きをするときに手間がかかること。

そうです。家庭裁判所による検認が必要なんです。

これ書類集めとかもあるし、結構面倒くさいです。すべての相続人に裁判所から通知が行ったりするのも、場合によっては厄介です。

最近あった事例ですが、「すべての財産は妻に相続させる」という自筆証書遺言を遺して夫が亡くなりました。相続人は、妻と子供二人。

通常だとここから戸籍集めて、検認申し立てして、通知が来て、裁判所行って…となります。何度も言いますが、これ結構面倒くさいです。時間もかかるし費用もかかるし。

でも、子供二人がこの遺言に同意している場合には、ちょっとした裏技があって、そうすれば検認しなくてもいいのでかなり手続き的に楽になります。

何が言いたいかというと、こういう手続きはいろんなやり方があるので、司法書士等の専門家に任せてしまった方が結果的に楽で安上がりだったりすることもあるわけです。

最後に、今回は遺言の内容がわかってる前提で書きましたが、実際に自筆の遺言を見つけても封がしてある場合は勝手に開けちゃだめですよ。

開けたら5万以下の過料の可能性があります。

それに場合によっては改ざん等を疑われるかもしれないんで気を付けてください。

相続(特別受益)

相続時にかなり重要になってくる制度に”特別受益”というものがあります。

特別受益とは、相続人間の公平をはかるための制度です。

民法903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

という規定があります。

相変わらず条文はわかりづらい。

簡単な例で説明します。

Aには1000万円の財産があったとします。

Aには子供がBCの二人いたが、Bだけに生計の資本として500万円あげた。

そして、その後Aは亡くなったとします。

そうなると、Aが亡くなったときの財産は500万円。そして相続人が子BCで、相続分は1/2づつになるので、BCそれぞれの相続財産は250万円となります。

ん?生前にBはAから500万円もらっているんだから、実質750万円もらってるのに、Cは250万円?これではちょっと不公平じゃないか?

なので公平の観点から、AがBにあげた500万円は相続財産の前渡しだった。と考えます。

つまり、Aの死亡時の財産は、手持ちの500万円+Bにあげた500万円で1000万円と考えるので、BCそれぞれの取り分は500万円。

しかし、Bはすでに500万円をもらっているから死亡時に新たに取得する財産は0円。逆にCは500万円を取得するという結果になります。

これで公平です。

ここでいうBがもらった500万円が特別受益。そしてその特別受益を実際の相続財産に加算することを相続財産の持ち戻しと言います。

しかし、生前にあげた財産がすべて特別受益に該当するわけではありません。

条文にあるように、”遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として”あげたものに限ります。

この曖昧な書き方がとても法律っぽくて嫌です。

遺贈はいいとして、何をもって生計の資本というのかよくわかりません。はっきりこれとこれは該当。これは対象外。と言ってくれれば争いも減ると思うんですが…。

なので、今までの判例に照らし合わせ、個々に判断するしかありません。

次回は、特別受益のつづきと、持ち戻しの免除について書く予定です。

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